才能のある⼦供たちは年齢や地域を問わず存在します。しかし、その輝きが既存の枠組みの中では⼗分に伸ばされず、困難を抱えることも少なくありません。⽂部科学省が始動した「特定分野に特異な才能のある児童⽣徒への⽀援の推進事業」は、こうした現状を変える⼤きな⼀歩であり、次期学習指導要領改訂に向けた議論も開始されました。
本年4⽉、愛媛⼤学には⽇本初の才能教育センターが誕⽣しました。この全国的な潮流を国内外へとつなげる場として、研究者・実践者・政策関係者が集結し、研究会が開催されました。レジェンド研究者の講演、海外の最新動向や政策展望、現場教員や教育委員会との討議、体験的ワークショップを通じて、「強みを⼒に、才能を未来に繋ぐ教育」の未来像を、多⾓的に描き出すイベントとなりました。
テーマ:「Gifted×Japan:才能が育つ社会へ、学校からの挑戦」
日時:2025年10月25日(土)9:30〜17:15
主催:愛媛大学教育学部附属才能教育センター
場所:愛媛大学教育学部附属小学校 多目的講義室
開会式
隅田学センター長の挨拶からスタートしました。
「子供たちの才能と笑顔を、学校、そして未来へ」と題し、才能教育センター設置の背景や組織について紹介がありました。
また、『そもそも「ギフテッド」ってどういう⼦供ですか?』、『⼦供や社会の多様性に⽇本の学校は対応できるのですか?』といった質問に答える形で、特異な才能のある児童・生徒の多義性や今後の教育の可能性について、発言されました。
開会式では、アン・ドヒ教授(President, The Korean Society for the Gifted Professor, Department of Education, Chung-Ang University, Korea)から、お祝いの言葉を頂きました。
アン・ドヒ教授からは、韓国の才能教育取組みの中で得た学びを3つ紹介頂きました。
第一に、「制度設計を築く前に、まず理解を育てること」
第二に、「政策には理念と実行力の両方が必要」
第三に、「公平性は到達点ではなく、設計の前提条件」です。
またセンターの発展に向け、「研究と実践を結びつけること」、「国際的な連携を育てること」、「子ども一人ひとりの全人的な成長を育むことを大切にすること」を希望として託して頂きました。
1)レジェンドトーク (オンライン録画)
レナ・スボトニック教授(University of California, Berkeley)に、「『IQ』を超えて―学校の内外、そしてその枠を超えて児童生徒の才能を育む―」と題して、アメリカにおける才能教育政策の変遷について、歴史的な流れと最近の動向についての貴重なお話を頂きました。
アメリカでは公教育の普及と共に、IQ検査が導入され、高IQの才能児を対象とした才能教育が広がりました。レナ先生は、高IQの子どもたちのみを支援対象にするのではなく、才能を時間の経過と共に変化し、発達していくもののと捉え、「特定の分野」に焦点を当てた「才能伸長アプローチ」の発展に寄与されています。本発表では、レナ先生が大きな影響を受けたと言われる研究について紹介頂き、なぜ才能伸長アプローチが大切なのか、また才能児に求められる力とはどういう力かについて、お話頂きました。本レジェンドトークは、才能教育センターのHPでも公開予定です。ぜひご覧下さい。
2) 才能教育最前線
韓国では40年以上に渡り、才能教育が実施されています。
才能教育最前線(1)では、京都女子大学の石川裕之教授に「韓国で才能教育はどのように発展してきたのか?〜その光と影に迫る〜」というテーマで発表頂きました。
まず韓国の才能教育における、歴史的経緯や教育体制、定義、目的、選抜方法やプログラムについて、分かりやすく紹介いただきました。また、韓国が長年に渡り、才能教育を行ってきたからこそ見えてきた成果と課題についてもお話頂きました。
才能教育がスタートした時点の理念と目的が、その後の才能教育のあり方を強く規定すること、わが国は何のために才能教育を必要としているのかを明確にし、第一の目的を定める必要があるとのご意見を聞き、今後の日本の才能教育の方向性について改めて考えさせられました。
お二人目はニューサウスウェールズ大学大学院のジャクリーン・ハードマン先生に「タスマニアの中学校・高等学校に通う才能児の学校生活と経験」について発表頂きました。
ジャクリーン先生は日本に長く滞在されていた経験をお持ちで、日本語で発表して頂きました。オーストラリアでの「才能」について紹介頂き、実際にジャクリーンが、タスマニアの才能ある子どもたちへ行ったインタビュー調査の結果を共有してくださいました。飛び級、特定科目での飛び級、ワンデイスクール、特定のプログラムへ不参加のグループの子どもたちの姿から、日本ではどのような形でのプログラムが最も適しているのかについて考えを深める時間となりました。
3)特別講演
文部科学省 初等中等教育局 教育課程企画室長の栗山和大様に、「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の充実に向けて~次期学習指導要領に向けた検討状況~」と題した特別講演を頂きました。
文部科学省では、現在の学校教育の中で主体的に学びに向き合えていない子供の増加を受けて、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方が検討されています。特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程WGが定期的に開催されており、特定分野に特異な才能のある児童生徒の教育課程に関する現状と課題、可能な支援方法等について議論が進められています。本公演では、文部科学省がR3年から進めてきた、特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援についての取組みついて、分かりやすく説明して頂きました。また、「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」の座長も務められました関西大学名誉教授の松村暢隆先生に指定討論を担当して頂きました。
4)シンポジウム
「学校の学びを広げ、多様化する―特異な才能のある児童生徒が自分らしく生きるために―」
司会を務められたのは愛媛大学教育学部教授・附属才能教育センター長の隅田学先生です。
先生・保護者・専門家、三者がそれぞれの視点から子供を見つめることで、子供の姿はより立体的に、そして実体的に浮かび上がります。その中でも、日々の教育活動の中で、多くの子供たちと出会い向き合ってきた先生だからこそ見えてくる、子供一人ひとりの個性や能力があります。学校現場の先生方が始めた新たな挑戦が、才能が育つ社会を動かしていくことを願い、本シンポジウムが開催されました。
パネリスト
愛媛大学教育学部附属小学校
会場提供もして頂いた愛媛大学教育学部附属小学校からは、教諭の水口達也先生、玉井淳博先生、幸島恭輔先生にご登壇頂きました。特別な才能をもつ児童のみならず、全ての子どもたちの知的好奇心を満たし、伸ばすための、教科の枠を飛び出した取組みについて発表して頂きました。
中村学園大学講師 新井しのぶ先生は、才能教育センターの客員研究員も務めておられます。福岡県内の公立小学校教員と連携し、本センターに相談を寄せられた児童への支援に対応されています。シンポジウムでは、その中で得られた課題と成果について発表頂きました。
長野県教育委員会指導主事の五味和高先生は、文部科学省の特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業の一つとして取り組んでいる「学校外の学びの場と学校を包摂するプログラム(= Beyond School ビヨンド・スクール )」について、実施する中で見えてきた課題や今後の計画について紹介頂きました。
コメンテーターとして、松山市立素鵞小学校教諭の大塚翔先生、京都府教育委員会総括指導主事の菊井雅志先生にお言葉を頂きました。また、愛媛大学ジュニアドクター育成塾の受講生でもあり、APCG2024gifted youth summitの参加者でもある中学生もコメンテーターとして、駆けつけてくださいました。自身の経験から、個々を重んじ、ありのまま特性を受入れる教育の大切さを訴えてくれました。
5)ワークショップ
ワークショップ1
「Differentiation that Works: Supporting Gifted Children in Inclusive Setting効果的な多様化対応:インクルーシブな環境でギフテッドを⽀援するには」と題し、Dr. Letchmi Devi Ponnusamy (National Institute of Education, Nanyang Technological University)に講話をして頂きました。「Differentiation」とは、すべての児童⽣徒の学びのニーズを尊重し、それぞれの学習⼒を最⼤限に伸ばすことを⽬指して、教育と学びのあり⽅を考える⽅法だと述べられ、Differentiationの必要性や方法について、教師が⾏うべきことや授業設計のポイントなどの具体例を挙げながら教えて頂きました。英語でのワークショップでしたが、日本語訳の付いた資料を準備して頂いたり、同時翻訳ツールを使用しながらお話し頂いたりと、日本語対応にもご尽力頂きました。
ワークショップ2
「特異な才能のある児童生徒向けの特別教育プログラムを考えてみよう!~愛媛大学におけるジュニアドクター育成塾/STELLAプログラムの経験から~」
愛媛大学教育学部教授・科学教育研究センター長の向平和先生からは、ご自身の経験を元に博学連携の大切さについてお話頂きました。参加者と一緒に博学連携したプログラムを考えたり、教科横断的な指導について話し合う中で、特異な才能をもつ子どもたちが、考える喜びや自己肯定感を育める活動について、共有し合いました。
ワークショップ3:「才能のある児童生徒への支援について学校の先生に知ってほしいこと」
講師:エルッキ・ラッシラ(神戸大学人間発達研究科助教)